インフル万能ワクチン開発、「新型」予防にも期待 厚労省研究班
新型インフルエンザを含め、あらゆるタイプのインフルエンザウイルスに効く可能性があるワクチンを厚生労働省の研究班が開発した。すでに、マウスを使った動物実験で効果を確認している。ただ、人間に接種した場合の副作用などを詳細に調べる必要があり、実際に実用化されるにしても数年はかかる見通し。
研究班は、国立感染症研究所と北海道大、埼玉医科大、化学メーカーの「日油」(東京都)。今月27日に感染研で行われた専門家の会合で、中間発表が行われた。
現在使われているワクチンは、インフルエンザウイルスの表面にトゲのように突き出しているタンパク質を元に製造している。ワクチンによって体内に作られた抗体が、トゲ状のタンパク質を確認して増殖を防ぐ仕組み。しかし、トゲ状のタンパク質は、毎年のように形が変異するため、そのたびにワクチンを製造し直す必要がある。
開発中のワクチンは、トゲ状のタンパク質に比べて変異しにくい、ウイルス内部のタンパク質に注目して製造された。抗体が内部のタンパク質を確認すると、細胞そのもののを攻撃し、増殖を防ぐ。
製造されたワクチンは、今季流行している「Aソ連型」と「A香港型」、さらに新型インフルエンザに変容する可能性がある「H5N1型」の鳥インフルエンザの3種類に共通する内部タンパク質を元に作られた。
ワクチンをマウスに接種して、それぞれのインフルエンザウイルスを感染させたところ、ウイルスの増殖が防げたことが確認されたという。マウスには人の遺伝子が入れられており、人にも効果が期待できるという。
研究班は今後、ワクチンメーカーを選定し、人間に接種した場合の安全性を確認後、実際に人を使った治験(臨床試験)を行うという。
研究班の内田哲也主任研究官は「人工合成したタンパク質を使っている点で安全性も高い。人間への安全性を確認し、早期の実用化を目指したい」としている。